インボイス制度への対策方法は?発行・受領の前後でやるべき手続き
インボイス制度には、消費税の納税額を正しく計算する目的があります。
インボイス制度において、売り手側は、請求書・領収書・納品書・レシートなどの書類を、適用税率や消費税額などを正確に伝える適格請求書(インボイス)として発行し、買い手側は受領したインボイスを適切に保管する必要があります。
インボイス制度へ対応するためには、売り手側・買い手側それぞれに準備すべきことがあります。本記事では、制度のルールに対応するために売り手側・買い手側が取り組むべき具体的な手続きや、対策の要点を基本から解説します。対策方法を検討されている経理部門の方は、ぜひ参考にしてください。
>> インボイス制度とは?経理業務に与える影響や対応するための準備手順
>> 経費精算とは?処理の流れや社員が抱えやすい精算の問題点・解決方法
この記事の目次
まずは、「売り手側(発行者側)」に必要とされる主な対応をご紹介します。大まかな流れを理解しておきましょう。
インボイス発行準備 | インボイス発行以降 | |
---|---|---|
売り手側(発行者側) |
・インボイス発行事業者の登録申請をするか確認 ・書類のレイアウトを見直す ・社内体制を整備する ・売上先に登録番号を通知する ・税額計算方法を確認する |
・インボイスを交付 ・インボイスの控えを保存 |
【インボイス制度対策|発行側】
インボイス発行のために必要な手続き
インボイス発行事業者の登録は、基本的に事業者側の任意です。しかし、仕入税額控除に関係することから、企業によっては登録の有無が仕入先を判断するきっかけになり得るでしょう。
インボイス発行事業者になるには、税務署で手続きを行います。申請時にかかる時間は、e-Tax提出の場合は約1か月半、書面提出の場合は約3か月が目安です。ここでは、インボイス発行事業者の登録や社内体制の整備について解説します。
【参考】
「適格請求書発行事業者の登録件数及び登録通知時期の目安について」| 国税庁
①自社がインボイス発行事業者の登録をするか確認する
インボイス制度の対象は消費税の課税事業者です。免税事業者は対象外であり、インボイスの発行事業者として登録できません。まずは、自社の登録の可否を確認しましょう。
②インボイス発行事業者の申請・登録をする
インボイス発行事業者の登録申請書を作成し、税務署へ提出します。
e-Taxからオンラインで手続きをする場合は、パソコン・スマートフォン・タブレットなどの端末から申請を行います。手続きには、電子証明書(マイナンバーなど)と利用者識別番号が必要です。利用者識別番号はWEB上で取得できます。
書面で手続きをする場合は、国税庁のサイトから申請用紙をダウンロードして、必要事項を記入した上で提出します。送付先は、管轄地域の「インボイス登録センター」です。登録申請手続きの詳細は、国税庁のサイトでご確認ください。
e-Taxでの適格請求書発行事業者の登録申請手続きについて詳しくはこちら
【参考】
「e-Taxによる登録申請手続」| 国税庁
「適格請求書発行事業者の登録申請手続」| 国税庁
③発行している書類の変更点を確認する
インボイス制度で対象となる書類として、請求書・領収書・納品書・レシートなどが挙げられます。従来の書類のレイアウトを、制度に対応した書式へと変更しましょう。その際、定型書式はなく、登録番号など一定の事項を記載した書類がインボイス(=適格請求書)とみなされます。制度の導入前後で記載の方法や計算方法などに変更があったため、注意しながらレイアウトを検討してください。
【書式の主な変更点】
・変更点1:レイアウトの変更
インボイス(適格請求書)の記載項目として、登録番号・適用税率・消費税額などが必要です。請求書・領収書・納品書・レシートなどの書類は、記載事項を満たしたレイアウトに変更しましょう。
・変更点2:端数処理方法の変更
消費税の端数処理は1インボイスにつき1回までとなります。商品やサービスごとに消費税の端数処理を行うのではなく、合計した請求金額に対して端数処理を行いましょう。標準税率(10%)と軽減税率(8%)が混在する場合は、それぞれの税率で端数処理を行います。その後、合算した金額を記載してください。
・変更点3:消費税の計算方法の追加
制度の導入後は、「割戻計算」だけでなく「積上計算」でも対応可能となります。割戻計算は、提供税率ごとの取引総額を割り戻して計算する方法、積上計算はインボイスに記載のある消費税額を積み上げて計算する方法です。売上税額の計算処理は、原則としてインボイスを交付した時点で行います。
④インボイスの交付や保管のための社内体制を整える
インボイスの交付や適切な保管ができるよう、社内体制を整備しましょう。インボイスの写しを保管する方法には、複数の選択肢があります。たとえば、コピーで保管する方法、電子データで保管する方法、一覧形式で保管する方法、ジャーナルで保管する方法、複写式で保管する方法などです。電子データで保管する際は、電子帳簿保存法に対応した文書保管システムを採用すると良いでしょう。
税務関係帳簿書類のデータ保存について定めた「電子帳簿保存法」では、2024年1月から電子取引データの保存が義務化されます。電子取引したデータは、電子データの状態のまま保存する必要があるのです。電子帳簿保存法に則った保存に取り組むことで、ペーパーレス化や業務効率化を図れるといったメリットもあるため、ぜひシステムの導入を検討してください。
インボイスの発行に関しては、電子請求書発行システム「楽楽明細」にお任せください。「楽楽明細」なら、既存の請求書データをシステムにアップロードするだけで、簡単にインボイスを発行できます。請求書発行の手間やコスト削減を実現し、経理部門の業務をサポートします。電子帳簿保存法にも対応しているため、データを適切な方法で保存することも可能です。気になる方は以下のリンクから「楽楽明細」をぜひチェックしてみてください。
>> インボイス制度・電子帳簿保存法に対応した請求書・納品書などの発行は「楽楽明細」におまかせ!⑤買い手(受領側)に登録番号を通知する
新たにインボイスとして発行する書類や交付方法などを取引先に周知しましょう。取引先と情報を共有し、互いの状況を把握することで、対応の準備をよりスムーズに進めやすくなります。
【インボイス制度対策|発行側】
インボイス発行以降に必要な手続き
売り手(発行側)がインボイスを発行してからやるべきことについて、経理部門の仕事への影響を確認しておきましょう。
①インボイスを交付する
インボイス発行事業者には、インボイスの交付義務や修正義務が発生します。取引において値引き・返品・割戻などが行われたケースでは、返還インボイスを交付しなければなりません。ただし、税込1万円未満の値引きや返品に関しては、返還インボイスの交付は不要です。
②インボイスの控えを保存する
インボイスを発行したら、控えの保存義務が発生します。保存期間は確定申告の提出期限の翌日から数える決まりで、法人の場合は7年間、個人事業主の場合は5年間です。
【インボイス制度対策|受領側】
インボイス受領前に必要な手続き
続いて、インボイス制度の対応前後で「買い手側(受領者側)」に必要とされる主な手続きをご紹介します。制度にあたり、買い手側は以下の流れで対策しましょう。
インボイス受領前 | インボイス受領以降 | |
---|---|---|
買い手側(受領者側) |
・自社が適用する制度を確認する ・請求書の記載事項を確認する ・帳簿への記載方法を検討する ・税額の計算方法を検討する |
・受け取ったインボイスを確認する ・インボイスを保存する |
そもそもインボイス制度の買い手(受領側)は、インボイスを必要としない可能性もあります。インボイスが不要となるのは、仕入先が免税事業者や消費者(個人)であるケースや、課税事業者の中でも「簡易課税制度」や「2割特例」の対象事業者であるケースなどです。
簡易課税制度とは、小規模事業者に配慮した消費税の計算方法に関する特例を指します。また、2割特例とは、負担軽減措置により消費税の納税額が売上税額の2割となる特例です。簡易課税制度や2割特例の対象事業者である場合、インボイスがなくても消費税額等を計算できることから、インボイスが不要となります。
ここからは、仕入先、自社ともに課税事業者であり、仕入税額控除を希望する場合の対応方法をご説明します。
①仕入先のインボイス対応状況を確認する
まずは、仕入先が適格請求書発行事業者の登録を受けているかどうかを、事前にご確認ください。事業者の登録情報は国税庁が運営する「適格請求書発行事業者公表サイト」からも閲覧が可能です。
②受け取ったインボイスの保存や管理の方法を検討する
仕入先から受け取ったインボイスを適切に保存・管理するために、社内体制を整備しましょう。受領した書類は、インボイス発行事業者・免税事業者・それ以外の事業者で分けて保管するのが望ましいといえます。その理由は、それぞれの事業者で消費税額が異なることから、書類が混在すると管理が煩雑になりやすいためです。
特に、インボイス制度の実施後から6年間は経過措置が設けられています。経過措置により、免税事業者の仕入税額相当額から、時期ごとに一定割合が控除される仕組みです。具体的には、2023年10月から3年間は80%、2026年10月から3年間は50%の控除が可能となります。支援措置を受ける際は、受領した書類を適切に分類して、事業者の種類ごとに明確に管理しましょう。
なお、インボイスの受領にともなう経理業務の負担増加を対策するなら、専用システムの導入が効果的です。受領した書類をシステム上で適切に分類し、効率的な保存・管理を実現できます。経理処理の不備を防ぐためにも、システムを活用してインボイスの受領に対応しましょう。
③帳簿への記載方法や仕入税の計算方法を検討する
インボイス制度の開始後も、帳簿の記載事項はこれまでと変わりません。ただし、前述した経過措置にて、仕入税額相当額からの控除を受ける場合は、経過措置の適用を受ける旨を記載した帳簿を保存する必要があるため注意しましょう。
【インボイス制度対策|買い手(受取)側】
インボイス受領以降に必要な手続き
ここまでお伝えしたように、買い手(受領側)では受領したインボイスの保存・管理が煩雑になりやすい点がデメリットです。インボイス制度の対応にあたり、経理部門の業務負担軽減へ向けた対策も検討すると良いでしょう。
①受け取ったインボイスを確認する
インボイスを受領したら、書類に記載された適格請求書発行事業者登録番号に間違いがないか、手動で確認する作業が必要です。国税庁のサイトで番号を閲覧し、書類に不備がないかチェックしましょう。
なお、インボイス制度に対応した専用システムを導入すると、自動で番号の読み取りや税区分のチェックが実施され、記載事項の不備が簡単に見つかります。手動での確認作業が不要となるので書類の確認や整理を効率的に行えるでしょう。
②インボイスを保存する
インボイスは紙の書類で交付されるケースと、電子インボイスで交付されるケースがあります。買い手側は紙とデータの両方で交付されることを想定して、社内の手続きで混乱が生じないように保存方法を明確に決めておくと安心です。
さらに、2024年1月以降は「電子帳簿保存法」により電子インボイスを電子保存する必要があります。仕入税額控除の適用を受けるためにも、インボイスを適切な形式で保存しなければなりません。一方で、税込1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくても仕入税額控除が可能です。こちらは一定規模以下の事業者に対する特定期間の事務負担を軽減する措置ですが、この場合も必要事項を記載した帳簿の保管が求められます。
【インボイス制度に関する国税庁の相談窓口】
国税庁の特設サイトには、インボイス制度の概要やQ&A、申請手続きに関する情報が掲載されています。
また、インボイス制度に関する一般的な質問や相談を受け付けるコールセンターも設置されているため、情報収集に活用すると良いでしょう。
個別相談が必要なケースでは、所轄の税務署に電話で問い合わせることも可能です。
【電話番号】0120-205ー553(無料フリーダイヤル)
【受付時間】9:00~17:00(土日、祝日を除く)
システム導入でインボイス買い手側の事務処理が簡単に!
ここまで、インボイス制度の対策について、売り手側・買い手側それぞれの視点から解説しました。インボイス制度は、対応準備に多くの手間がかかります。
特に注意したいのは、買い手(受領側)となる企業における、インボイス受領に関する業務です。インボイス制度の導入後は、受領した書類のチェックや管理の作業が発生します。そのため、制度の運用に関わる経理部門では、負担を軽減するためにシステム導入などの対策を講じるのが望ましいでしょう。
経理部門の事務処理の負担を軽減するなら、インボイス制度対応の経費精算システム「楽楽精算」がおすすめです。
「楽楽精算」には、インボイスを受領する買い手側の経費精算を楽にする便利な機能が揃っています。インボイスの登録番号を自動で読み取れるほか、仕訳上で発行事業者を管理できます。電子帳簿保存法にも対応しているので、インボイスの電子保存も可能です。「楽楽精算」で経費精算のインボイス制度に対応しましょう。
インボイス制度の対策についてのQ&A
インボイス発行事業者に関するよくある質問と回答をご紹介します。
Q1. 消費税の課税事業者とはどのような事業者?
課税事業者とは、基準となる期間内の課税売上高が1,000万円を超えて、納税義務のある法人または個人事業主を指します。
Q2. インボイス制度に対応しないとどうなる?
買い手側である消費税の課税事業者がインボイスを受領できない場合、仕入税額控除を受けられなくなります。
税負担が増加するおそれがあることから、売り手側がインボイスを発行できないと、取引の見直しに関わる可能性があると考えられています。
Q3. インボイス制度に対応するメリットは?
インボイス制度へ対応する際、書類を電子化することで業務効率化が期待できます。
制度の導入後は多くの企業が記載項目の要件を満たしたインボイスを発行するため、システム導入により事務処理を自動化できます。また、紙の印刷や郵送、保管に関わるコストを削減できるのもメリットです。
Q4. インボイスの発行事業者に登録しなくても良いのは?
小売業に代表されるような、消費者(個人)が買い手となる事業の場合、消費者は消費税を申告する必要がないことから、売り手はインボイス発行事業者に登録しなくてもデメリットが生じません。
このほかに、売り手・買い手の交渉により両者が合意した場合も、例外的にインボイス発行事業者に登録しないケースが考えられます。
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